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手描き染め技法

18 糊糸目友禅(のりいとめゆうぜん)
19 ゴム糸目友禅(ごむいとめゆうぜん)
20 型糸目友禅(かたいとめゆうぜん)
21 堰出し友禅(せきだしゆうぜん)
22 素描き友禅(すがきゆうぜん)
23 濡れ描き友禅(ぬれがきゆうぜん)
24 豆描き友禅(まめがきゆうぜん)
25 点描式友禅(てんびょうしきゆうぜん)
26 色撒糊友禅(いろまきのりゆうぜん)
27 白揚げ友禅(しろあげゆうぜん)
28 茶屋染め(ちゃやぞめ)
29 友禅糊叩き(ゆうぜんのりたたき)
30 友禅糊流し(ゆうぜんのりながし)
31 友禅手摺り疋田(ゆうぜんてずりびった)
32 友禅糊疋田(ゆうぜんのりびった)
33 蝋盤打出し鹿の子(ろうばんうちだしかのこ)
34 描き更紗染め(かきざらさぞめ)
35 丸刷毛友禅(まるばけゆうぜん)
36 描上げ彩色蝋纈(かきあげさいしきろうけつ)
37 玉糊友禅(たまのりゆうぜん)
38 一珍染め(いっちんぞめ)
39 手描き写し加工(てがきうつしかこう)
40 金彩友禅(きんさいゆうぜん)
41 漆糸目描き(うるしいとめがき)
42 しけ引き

18 糊糸目友禅

18 糊糸目友禅(のりいとめゆうぜん)

糊糸目友禅
糊糸目は総じて優しい感覚で模様を表わすのが持ち味といわれる。

図版の作品は糊糸目友禅の優雅さで柳の優雅さや花笠の華麗さを表現、 糊糸目にふさわしい品格と調和を保っている。地色は引染めして、 仕上げ加工で金糸目。金駒繍をあしらっている。

19 ゴム糸目友禅

19 ゴム糸目友禅(ごむいとめゆうぜん)

ゴム糸目友禅
友禅目は手描き友禅技法の伝統的な糊糸目に比して、油性の糸目防染のために、 模様輪郭の糸目がより際立つのが特徴である。作業性も糊糸目に較べて有利である。

図版の作品は大作菊や葉の濃色暈しが効果的で、 輪郭をはっきり表現した大胆な振り袖である。

20 型糸目友禅

20 型糸目友禅(かたいとめゆうぜん)

型糸目友禅
手描きの糸目は、単品制作に適しているが、同じ模様を何反も制作するにはゴム糸目 を型置きすることで、手描き友禅の合理化が計れるようになった。

図版の作品は端正な花柄を配した一般向き問着。付け下げや量産する留め袖などに よく用いられている。

21 堰出し友禅

21 堰出し友禅(せきだしゆうぜん)

堰出し友禅
堰き出しは、模様の輪郭の外側に糯糊で堰の糸目を置き、 模糯以外の部分は伏せ糊で全面に埋め、模様の内側に彩色する。 このため輪郭線のない模様表現となる。

図版の作品は草花模様を堰出し特有のシエットではんなりした配色を使い、 優しく表現している。

22 素描き友禅

22 素描き友禅(すがきゆうぜん)

素描き友禅
生地直接に色料液を筆や刷毛で絵画調に模様を表現する技法。 糊糸目は使わないので無線友禅と呼ばれている。

図版の品「地紙散らし」は色留袖のために扇面を糊防染して、 四季の花樹を描きだしている。一部に金彩仕上げ・糸目も併用した 格調の高い作品。

23 濡れ描き友禅

23 濡れ描き友禅(ぬれがきゆうぜん)

濡れ描き友禅
日本画をそっくり着物に描いたような染色である。 糊液で濡らした生地に染料液を含ませた筆・刷毛で直接に模様を描くので、 模様の輪郭がはんなりした表現になるのが特徴。

図版の「鯉遊泳」は流水をゴム糊で描き、鯉水面を濡れ描き手法を 駆使して染めている。

24 豆描き友禅

24 豆描き友禅(まめがきゆうぜん)

豆描き友禅
大豆の豆汁を混ぜた墨の染料で、模様をまず墨絵のように描くので 豆描きの名称がある。

図版作品の孔雀模様は華やかな彩色に、濃淡の墨色で緩急・強弱をつけた 自在な筆勢を駆使し、模様の縁取り輪郭を描き上げ、彩色して仕上を 金泥などを描き加えている。

25 点描式友禅

25 点描式友禅(てんびょうしきゆうぜん)

点描式友禅
点描画法を友禅に取り入れ、新たな表現分野を拓いた技法。 点描式の染めは、色糊・染液・ゴム液・蝋を刷毛などに付けて生地に リズミカルに叩くよう表現する。

図版作品「竹叢」は竹の葉を防染して、若草色から縁まで段階的に 点描で丹念染められている。

26 色撒糊友禅

26 色撒糊友禅(いろまきのりゆうぜん)

色撒糊友禅
白撤糊に染料を混合した色撤糊は、表現の多様化を促し、 模様の背景を効果的に加飾するのに使われている。

図版の作品は糸目友禅に色撒糊を施している。地入れ後、 彩色の前程で全面に濡らした生地に緑とピンクの色撤糊を散布し、 乾燥後量暈しめしたもの。

27 白揚げ友禅

27 白揚げ友禅(しろあげゆうぜん)

白揚げ友禅
友禅染め古法の一つ。生地の両面から模様部分を糊防染して地染めの後、 染め残した部分に部分色を施す技法。

図版の作品は麻上布に御所解き模様を引染めで白揚げし、 花・葉の部を渋味の彩色と金糸と色糸の刺繍で仕上げている。 江戸時代の風情を残す作品。

28 茶屋染め

28 茶屋染め(ちゃやぞめ)

茶屋染め
茶屋染めは涼風を誘う麻上布に藍を主調色にして、御所解き模様を染めた 唯子である。友禅染めの発生より早くに興っており、近世の手描き模様染めには 華麗な友禅と風韻豊かな茶屋染めの流れがある。

図版の作品は茶屋染めの古典柄を精巧に復元している。

29 友禅糊叩き

29 友禅糊叩き(ゆうぜんのりたたき)

友禅糊叩き
叩き染めは一般に模様背景の変化や部分的な加飾として、 手描きではできない斑点状に表現する技法。

図版作品「醍醐の桜」は格調の高い手描き友禅で描き、 背景の淡い色霞の部分に彫などの用具を使って白糊や色糊を 叩き染めし、その特徴を生かしている。

30 友禅糊流し

30 友禅糊流し(ゆうぜんのりながし)

友禅糊流し
手描き友禅の一部分に糊流しを併用する染め技法。

図版の作品は水仙の図を本友禅で染め伏せ糊をして着物の形に仮絵羽し、 これを別の広い板に液状に近い糊で潮流しした上にせて、 糊流し模様を転写して染め上げている。四人がかりの仕事である。

31 友禅手摺り疋田

31 友禅手摺り疋田(ゆうぜんてずりびった)

友禅手摺り疋田
鹿の子模様は、我が国で特に好まれ、疋田模様とも呼ばれ 江戸時代から友禅小袖に多用されている。

図版の作品は竹を大胆に文様化した友禅染めの一部に、 疋田型を墨で濃淡に摺り染め、竹を赤で表わして地色を緑に染め、 金加工で仕上げた若向きの斬新な友禅。

32 友禅糊疋田

32 友禅糊疋田(ゆうぜんのりびった)

友禅糊疋田
糊疋田は緻密な丹念さがその作業に必要である。

図版の作品は波頭に飛翔する鶴を染め出した柄。 鶴を盲(目なし)疋田、波の部分は日あき疋田と筒糊で描き分けて引染め後、 白揚げした鶴に揉み箔・切り箔を施し、 要所に落し箔を散らした品格のある糊疋田。

33 蝋盤打出し鹿の子

33 蝋盤打出し鹿の子(ろうばんうちだしかのこ)

蝋盤打出し鹿の子
御所の女官が趣味としていたが、寛永の頃名筆家・寺井養拙斉が これを見聞して模様染めに取り入れたと伝えられる。

図版作品は友禅模様の糊鹿の子柄の部分を蝋盤に載せて、 突出し道具でその部分を蝋盤に打ち出し隆起させ、 鹿の子柄を立体的に表現している。

34 描き更紗染め

34 描き更紗染め(かきざらさぞめ)

描き更紗染め
異国情緒に溢れる更紗は、現在も好事家に称揚されている。

図版の作品は古渡り更紗にある笹蔓手と格天井の実物の更紗裂れを 座右に見て、手描きで染めている。糸目置きしてベージュに引染め、 模様を彩色してこの部分を蝋伏せ、桃色に地染め、金更紗としている。

35 丸刷毛友禅

35 丸刷毛友禅(まるばけゆうぜん)

丸刷毛友禅
丸刷毛(手描き摺り込み刷毛)を用いて生地に描き染める技法。

図版の作品は濡れ描きと豆描き技法を併用して松・遠山・五重の塔を 墨絵を描くような手法で遠近に描きわけて染め上げ後、 松の実など要所を金泥で仕上げている。

36 描上げ彩色蝋纈

36 描上げ彩色蝋纈(かきあげさいしきろうけつ)

描上げ彩色蝋纈
無線描きに蝋防染を併用して、日本画調の模様を染める技法。

図版作品は信州の山あいを描いていている。遠景の山川草木、 谷間の屏風岩を濡れ描き、素描きしている。瀑布や谷川などは その後に蝋伏せして、周囲を重ねて彩色するので、 模様と模様の境が際立つている。

37 玉糊友禅

37 玉糊友禅(たまのりゆうぜん)

玉糊友禅
鶏卵の卵白を加えた糊を使って模様を防染するので、 この名称がある。卵白の加熱固化性質を利用した技法である。

図版の作品は玉糊を筒糸目で描いた「白揚」の紅染めで部分に 彩色している。珍品のために屏風に仕立て、玉糊師利七の銘がある。 明治期の作。

38 一珍染め

38 一珍染め(いっちんぞめ)

一珍染め
一珍糊は糯糊に比べ粘りに欠けてさくいので、細い線を引くのが難しく、 乾燥後、亀裂が入り生地から剥離し易い欠点がある。

図版の作品はこのような欠点を感じさせない裂れ取り模様の 手描き更紗で、一珍染めの素朴な味わいがよく表現されている。

39 手描き写し加工

39 手描き写し加工(てがきうつしかこう)

手描き写し加工
写し友禅の色糊を手描きに応用した技法。

図版の作品は色絵陶器の下絵に合わせて糸目糊を防染部分に置き、 次いで写し糊を小筒で拙いて、暈しや影の部分を大小の擦り込み 刷毛やスポンジ等で引き伸ばし、暈し・叩くなどして染める今では 数少ない染法である。

40 金彩友禅

40 金彩友禅(きんさいゆうぜん)

金彩友禅
友禅の加飾に欠かせない金彩加工の豊富な技法を主役にして制作された友禅。

図版作品は友禅染めした後に各種の金彩加工を施し、 几帳や切り紙・扇面の部分には型を使った摺り箔・切り箔・ 野毛箔に砂子を散らすなど、金彩の加工技術を駆使したものである。

41 漆糸目描き

41 漆糸目描き(うるしいとめがき)

漆糸目描き
友禅染めは伝統的技法の他に常に新工夫を生かしている。

図版作品の色漆描きは、漆を糸日に使う手法で、戦前に始まった。 色漆は白・黄・赤・青など5〜6色に限定されるがこれを調合して、 小筒で模様を描く特異な技法。作品は孔雀を漆糸目描きで表現し ている。

42 しけ引き

42 しけ引き

しけ引き
櫛状にそいだしけ刷毛で繊細な縞柄を染め付ける技法で、 織り縞と違った優しさを刷毛により多様な縞・格子を表現する。

図版の作品は友禅板に貼った生地に何色ものしけを規則正しく引き、 横にオレンジ色を少し引いて変化を付け、上品な着尺柄に仕上げている。